鉄観音といえば烏龍茶の中でも良いお茶のこと、と思っている人が結構多いようですが、これは間違った知識です。
知っているようで実は知らない“鉄観音”についてぜひ知識を高めてください。

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■■      中国茶豆知識! テーマ『鉄観音って?』       ■■
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烏龍茶には数多くの品種があります。

水仙・黄旦・奇種・青心・四季春・翠玉・金萱・毛蟹etc

これらの品種の茶葉を半発酵状態に製茶したものの総称が烏龍茶です。
では鉄観音とは何なのでしょうか?
正解は鉄観音も上記烏龍茶の中における一つの品種(の名称)です。
よく中国や台湾の免税店などで販売しているお土産用のお茶セットには 『烏龍茶』『鉄観音』と記載しています。
これをみて「あぁ、烏龍茶と鉄観音は別のお茶なんだ」と解釈される方が多いようです。
実際飲んでみると味も違うし、何となく鉄観音のほうが美味しかったりします。
しかし、これは品種が違うだけで両方とも烏龍茶です。


■鉄観音の原産地“安渓”

では鉄観音はどこで作られているのでしょうか?
鉄観音は限られた場所でしか作られていませんが、原産地は福建省の安渓という所です。
日本からも直行便が飛んでいる厦門(アモイ)という港町から程近い福建省南部の温暖な地です。
福建省といえば皆さんもご存知の烏龍茶の中心産地ですが、その福建省の中でも北は武夷山、南は安渓といわれる福建省二大烏龍茶産地の1つです。

鉄観音は特に華僑に愛され、華僑の好む様々な度合いの焙煎を施したこげ茶色の茶葉で世界中に運ばれ、飲まれています。
しかし、現在安渓で出荷される鉄観音は鮮やかな緑色を茶師が競い合うかのように “売り”にしています。
野性味たっぷりの良い意味の“青臭さ”を残した茶葉は、錆びた鉄のような色をした鉄観音に馴染みのある我々日本人にはちょっと意外な感じがあるかもしれません。


■安渓鉄観音の魅力

鮮やかな緑色をした安渓の鉄観音の最大の魅力は、お茶を飲み干した後にやってきます。
喉元から鼻に抜けるなんともいえない甘みのある残香、これを『音韻』と呼びます。
台湾の軽発酵烏龍茶などと比較すれば、野生的な青みを感じる味で一度飲んだだけではその味がなかなか理解できない人も多いのですが、
一度ハマると、『もうこのお茶しか飲めない』という人も多く、当店でもこれだけしか買わないというお客様も大変多くいらっしゃいます。


■鉄観音のグレード

安渓の茶種の中では鉄観音はダントツに価格が高く、他を圧倒しています。
本当に高い鉄観音は、当店で販売すれば50gで2万円位になってしまいますが 、これは日本では到底理解されないと思いますので仕入れておりません(笑)
その一方で鉄観音はどんなに安い物でも極端な安さにはなりません。ところが、茶商の中には極端に安い鉄観音を売る者がいます。
これには困った問題が存在します。
鉄観音と他の安渓産茶種は非常に似通った姿をしています。
本山・毛蟹・色種・黄金桂といった茶種です。
なかなか素人では鉄観音とこれらの茶種の違いは見分けられません。
(飲めば『音韻』が有りませんのですぐ分かるのですが・・・)
これらの茶種を鉄観音として販売する悪徳茶商がいるということです。極端に安い鉄観音は避けたほうが無難でしょう。


■台湾の鉄観音

一方、台湾にも鉄観音が存在します。
これは鉄観音の苗木を安渓から移植して作られたものですが、台湾では昔ながらのこげ茶色の鉄観音が愛されています。
台北市郊外の木柵地区・猫空(マオコン)というところが産地として最も有名で“木柵鉄観音”と呼ばれます。
実は台湾は一年中温暖な気候であるため、日本では緑色の茶葉で知られる凍頂烏龍茶や高山茶にも焙煎をして飲まれることが多いのです。
焙煎が軽いお茶は常温保存すると、酸化が進み味と香りを損ないます。
しかし、焙煎をすることにより酸化しにくくなり、味や香りも保つことが可能になるからです。
焙煎の度合いにより“中火”“重火”という呼ばれ方をします。
もちろん“軽火”も飲まれますが、焙煎の軽い茶葉で新鮮さを味わうか、はたまた重焙煎でいつまでも美味しく飲むかは人によって意見の分かれるところ、という訳です。
木柵鉄観音の味は日本で飲まれている烏龍茶に近いのですが、香りが全く違います。
焙煎香の裏に隠れる甘みある香りは多くのファンがいらっしゃいます。


■香港の鉄観音

香港などで良く見かける昔ながらのこげ茶の鉄観音は、茶商が安渓から仕入れた茶葉を独自に自分の顧客の好みに合わせ焙煎を施したものです。
もちろん軽焙煎のものもありますが、中焙煎・重焙煎のものが多く見かけられます。
その店の焙煎状況と味わいを試しながら鉄観音を選ぶ楽しみが香港の茶店にはあります。

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中国茶豆知識! テーマ『鉄観音って?』いかがでしたか?

私も最初に安渓鉄観音を最初に飲んだときは、その青臭さを素直に受け入れられなかった記憶があります。
しかし今では大変好きなお茶の1つで、毎年数ある新茶の鉄観音から仕入れ品を決める試飲時には、仕事を忘れて愉しむひと時となりました。
あなたも軽発酵の安渓鉄観音の魅力に触れてみませんか?
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